借入れのうち半分を自治体からの金利助成で

とまどったことは、そればかりではありませんでした。もう一つ、マンションが建つ前に大きな山場だったと思うことがあります。それは、役所とのやりとりでした。私たち夫婦がいくら節税対策とはいえ、9億円もの借入れをしてマンション経営を行なうのは、かなりの官険でした。手持ち資金はほとんどありませんでしたから、建築資金は全額、金融機関からの借入れだったのです。いくら右肩上がりのバブル期とはいえ、堅実な方なら当時でもきちんと自己資金を貯めて、銀行から借りるお金を少しでも減らそうとするのではないでしょうか。借金をしたからといって、それが直接、相続税対策につながるわけではありません。つまり、借金が節税の直接の要因ではなく、マンションを建てることによって税金の対象となる「土地の評価額」が安いものに変わるのです。したがって、当時の金利負担を考え
ると、可能な限り自己資金でまかなったほうが、安定経営という側面から考えれば得策というわけです。でも、私たちの場合は、事前にマンションを建てるための資金を貯めておくという余裕もありませんでした。それでも全額借入れでマンション経営を始めるに至ったのは、自治体から金利の一部を助成してもらえるという話があったためです。当時も今も、マンションの建築予定地の周辺は、木造建築密集地帯です。いわゆる「木みつ密」といわれる場所です。こうした場所は、地震や火事で被害が大きくなりやすいため、自治体からの助成金によって不燃化や耐震化の基準を満たした建替え事業を促進していました。自治体の制度では、建物を建てるときの資金に対する助成と、金利の補助という形の助成の2通りがあります。今は金利といっても2%前後のケlスが多いかもしれませんが、私たちが借入れをしたときはバブル期、617%もの金利でした。億単位のお金を借りる場合、この金利の返済は大きなネックとなります。ですから、素人がマンション経営に乗り出すには、自治体からの金利補助という助成制度はとても心強い存在でした。具体的には、全借入額の約2分の1は初年問、完全固定で金利6%(ただし、日年目から6・4%)、そのうち、オーナー側の負担は常に2%の負担のみ。差額の4%(日年目以降は4・4%)は助成されるというものです。つまり、本来ならば9億円のうちの半分、約4億5000万円に対して6%の金利を支払うべきところを、実際には2%で済むわけですから、オーナー側にとってはかなり有利な制度だったのです。この助成金制度があったからこそ、マンション経営に乗り出したといってもいいほどでした。ところが、役所というのはなかなかむずかしいところです。何度も「助成金が出るんですよね。上限はないのですよね」と担当者に確認し、「大丈夫です」と口約束をいただいていたのですが、その話が進んだとき、「1棟だけにそれほどの助成はできないかもしれない」と言われてしまいました。

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